婚約指輪はいらない
私は、結婚を前提にお付き合いしている彼に対して、婚約指輪や結婚指輪の類は必要ないと伝えていました。
なぜなら、私にはアクセサリーを身につける習慣がないからです。
その上、私は表参道にあるビューティーサロンで働いていて、お客さまの髪の毛に直接触れる仕事をしています。
せっかく婚約指輪や結婚指輪をもらっても、職務遂行上の理由から、指にアクセサリーをつけることはできないのです。
それに、高いお金を出して指輪を買うのなら、これからはじまる二人の新生活のためになるような、意味のあることにお金を使うほうがいいでしょう。
家具を買ったり、引っ越しをしたり、二人が新生活をはじめるためには、お金がいくらあっても足りないのですから。
このことは、彼に会うたびに話してありました。
「もしアナタが指輪を買ってきたら、すぐに質屋にもっていって現金化しちゃうから」とまでいってありました。
ところが、彼からプロポーズされたとき、彼は婚約指輪を用意していたのです。
リングの中央に、ダイヤモンドがキラキラと輝く高そうなものでした。
彼は「これは男のけじめなんだ」といい、私の薬指にゆっくりとリングをはめました。
このとき、私はなぜだか涙を流してしまいました。